税について

アメリカでの申告

家賃収入はアメリカの税法上、所得税の課税対象になります。後術の「ネットレント課税方式」を選択しない限り,「源泉徴収課税方式」が適用されて、家賃収入の30%が連邦税として課されます。テナントが家賃を支払う際、30%の税率で源泉徴収し、家主(非居住外国人)に代わって税金をIRS(内国歳入庁)へ納付します。

「ネットレント課税方式」を選択すると、家主である納税者が確定申告することになります。総家賃収入から固定資産税、支払利子、修繕費、管理費、維持費、保険料、減価償却費などの必要経費を控除して、ネットレント純利益または純損失(不動産賃貸所得)を割り出し、通常の所得税率(15%、28%、31%、36%、39.6%の5段階累進税率)で税金を納付します。

「源泉徴収課税方式」では、賃貸活動からの収支に関係なく、たとえネットロスの計算が可能であっても、たえず家賃収入の30%を税金として支払わなければなりません。それに対して、「ネットレント課税方式」では、家賃収入からすべての関連必要経費を控除した後の圧縮されたネットの金額に、通常の税率を適用するため、「源泉徴収課税方式」よりも税金がはるかに少なくなります。必要経費の合計額が家賃収入よりも多ければ純損失となり、税金はゼロとなります。

「源泉徴収課税方式」は、源泉徴収だけで連邦税の納税手続きが完了し、確定申告を必要としません。しかし、テナントと住居の管理を委託された会社は、毎月、家賃の30%を銀行振替でIRSに納付し、年末には1年間分のまとめを「報告書フォーム1042」様式に記入して提出する義務があります。テナントまたは管理委託会社にとっては、いたって煩雑で、専門家の手助けなしにはこの手続きはできません。

家賃が税金を引かれずに全額が支払われている場合、決しておろそかにしてはいけないのが、確定申告の提出です。「ネットレント課税方式」を選択している場合は、報告を必要とする最初の年度に、「申告書フォーム1040NR」様式に「IRC871(d)条に基づき実質関連所得のネットレントで課税を受ける選択をする」旨を記述し、「ネットレント計算スケジュールE」様式を添付して提出します。申告書を提出しないで、提出期限から1年4ヵ月経過すると、関連必要経費を控除する権利を失い、総家賃収入に対して30%の税金が徴収されます。

必要経費を差し引いたネットレントが純損失になるため、どうせ税金は発生しないということで申告しないでいるのは、大変危険です。アメリカでは、申告書を提出しないと時効も成立しないため、税務調査が始まると何年でもさかのぼって追徴税、延滞利子、ペナルティーが科されます。

なお、税金は、連邦政府だけでなく不動産が所在する州に対しても、申告納付する義務があります。

日本での申告

……………日本の居住者は、全世界での所得が課税対象となります。アメリカ国内の不動産賃貸から生じるネットレント純利益は、日本の所得税法上の不動産所得であり、給与所得などと合算して総合課税の対象となります。ネットレントが純損失(赤字)になった場合、原則として、給与などの他の所得との損益通算による相殺控除ができます。

しかし、この損益通算を無制限に認めることが節税対策に利用され、思いがけない土地需要を生み出したことがバブル期の地価高騰の一因となったため、土地所有に対する借入金利子の損益通算に制限が設けられました。

この制限とは、ネットレント純損失が土地部分に対する支払利子を控除したことによって生じた分については、損益通算による相殺控除を認めないとするものです。建物部分に対する支払利子、減価償却などによって作り出された純損失についてだけは、相殺控除が認められます。

日本の居住者(アメリカの非居住者)によるアメリカの不動産のネットレントの金額は、アメリカでの方式に則って計算したネットレントを円換算した金額と同一にはなりません。日米間で、減価償却費の計算方法や控除対象の支払利子、円ドル換算レート適用において相違があるためです。

▲減価償却

日本では、木造、鉄筋、新築、中古などの不動産の種類によって異なった耐用年数を適用します。また、償却方法も、定額法または定率法のいずれかを選択して計算することができます。

アメリカでは、不動産の種類にかかわりなく、賃貸住居の減価償却は、耐用年数27.5年、償却方法は定額法で計算します。

▲支払利子

前述のとおり、日本では建物に対する支払利子の控除が認められ、土地部分対応の支払利子控除は否認されることがあります。

アメリカでは、建物部分、土地部分とも控除が認められます。

▲円ドル換算レート

家賃収入や当期に発生した経費は、当該年度の平均為替レートでドルから円へ換算します。減価償却のための建物部分の所得費は、不動産の購入日の為替レートでドルから円へ換算します。

以上の計算上の違いにより、同一物件のネットレントの計算が、日本とアメリカで異なるという結果が生じます。場合によっては、アメリカでは純利益、日本では純損失、またはその逆ということもあります。

日本とアメリカの両方で税金を納めることになった場合は、アメリカで支払った税金について外国税額控除の形で日本の税金から差し引くことになり、二重課税は回避できます。

日米不動産税金比較

  日本

  米国

取得時

*印紙税

 なし

*登録免許税

 なし

*不動産取得税

 なし

*消費税

所有時

*固定資産税(評価額の1.7%)

*固定資産税(購入価格の約1%)

*所得税

*所得税(外国税額控除制度あり)

*減価償却 様々

*減価償却 賃貸用27.5年

売却時

*譲渡所得税

*キャピタルゲイン税

短期 39%

連邦15%

長期 20%

州 カリフォルニア9.3%、ネバダ0%

一年所有で長期

事業用資産買換え特例有